「リハビリテーション」という言葉を耳にしたことはありますか?
怪我や病気を患った方に対して「リハビリ頑張ってください」と声をかける方を多く見かけることがあります。
そうした様子を見ると、怪我や病気によって身体機能が低下した方に対して、身体機能の回復に向けた訓練をすることがリハビリテーションの意味だと思われているのかな?という印象を受けます。
もちろん、病気や怪我による機能回復のための医学的な機能訓練を指す意味もありますが、幅広い視野からは「人間としての権利の回復(復権)」と「生活の再建」を目指すという意味合いがあります。
こんにちは!まろです。
東京から阿蘇・小国郷へUターン。
普段は理学療法士として、小児の発達支援やリハビリ特化型のデイサービスで介護予防を目的に運動指導を行っています。
私が住んでいる阿蘇・小国郷の人口は、昭和30年の24,000人から平成27年には11,700人となり、60年の間で48%強の人口減少となっています。
地方で生活を行うにあたり、少子高齢化は向き合っていかなくてはいけない社会課題です。
住み慣れたこの町で、これからも安心して暮らしていくためには、どのような対策をしていけば良いのか、個人が意識して考えていく必要があると思っています。
私は、東京から地元地方へのUターンを機に、地域活動に積極的に加わり、様々な人と関わることで身体のケアや体力作りに興味を持ってもらえる活動がしたい。
その思いから、フリーでWEBライター活動を始めました。
- リハビリって、病院の中で行うものでしょ?
- 小国郷ではどんなことに取り組んでいるの?
これからは、病気やケガをした時に、すべての人が十分な医療や介護サービスが受けられるとは限らない時代がやってくるかもしれません。
今まで、医療や介護とは無縁に生活してこられた方も、これからの時代に備えて、医療や介護、ご自身の健康維持に関心を持てるよう、地域活動に加わっていきたいと考えています。
今回は、病気やケガによって日常に何かしらの援助が必要となった方に対して、どのように関わっていったら良いのか悩んでいる。
そうした方に対して、リハビリテーションという言葉の意味を知ってもらい、良好な関係を築くための新たな視点になると幸いです。
リハビリテーションって何?
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リハビリテーションとは、単に機能回復に向けた訓練という意味だけでなく、障害を持たれた方が自身の社会生活を取り戻すという意味があるという事を理解することはとても重要です。
なぜなら、私たちは達成したい目的があって行動を起こしているからです。
人はなぜ立って歩くのか?
なぜ手先を自由に動かすのか?
そこには、トイレで用を足す、箸を使って食事をする、パソコンでプログラミングをする、登山をする。
こうした達成したい目的があって、私たちは行動を起こします。
機能回復に特化していると、歩くことや手先を動かすことがゴールになってしまいます。
では、トイレで用を足すという目的の人と、登山をする事を目的としている人は歩くという動作を獲得する上で、同じ支援で良いのでしょうか?
箸で食事をするという目的の人と、パソコンを使って仕事をするという目的の人は、自由な手先の動きを獲得する上で、同じ支援で良いのでしょうか?
- その人がその障害を受けて奪われた生活の権利を取り戻す。そうした意味合いを理解する事で、支援をする内容は大きく変わります。
- したがって、実際のリハビリテーションでは心身の機能回復ばかりに目を向けるのではなく、身の回りの動作が自立して家庭生活や社会生活が可能になるなど、広い視野を持って総合的に支援を行いQOL(生活の質)を向上させることが最終的な目標となります。
QOLを高める
リハビリテーションは機能訓練のためのプログラムに限定せずに、自立を支援するという考え方を持つことを重要視しています。
リハビリテーションの流れ
急性期リハビリテーション
手術後や発症直後から治療と並行して、ベッド上での対位交換や関節拘縮の予防といった、主に長期間の臥床による廃用症候群の予防と早期離床を目指してベッドサイドでの機能訓練が行われます。
回復期リハビリテーション
急性期病棟にて疾患の治療が終えたら、在宅復帰を目標に日常生活で必要となる動作習得に向けて、みっちり時間をかけて集中的にトレーニングを行います。
維持期リハビリテーション
医療機関でのトレーニングは終了し、在宅や施設にて機能の維持と改善、日常生活動作や社会性拡大などを図り、地域交流を通じて社会的孤立を予防し、QOL向上を支援します。
終末期リハビリテーション
怪我や病気、高齢などの原因で心身の機能低下が進行し、自立した生活を送れなくなる場合もあります。症状の改善が困難な場合であっても、苦痛の軽減や自立に向けた支援を継続して人としての尊厳を保ち、安らかに看取りを迎えるため支援します。
小国郷での取り組み
○あんしんネットワーク
小国郷の医師数は急速に進行した少子高齢化を支えるためには、十分とは言えない状況に来ています。
そこで、病院に限らない医療系従事者、福祉や介護関係事業所と医師や病院が連携をとり、医師不足を補う対策が必要です。
退院後も安心して生活が続けられるように、民生委員や地域ボランティアの支援、地域課題の共有するための他職種連携を強化すべく、2014年に発足されました。
少子高齢化の課題に向き合い、小国郷で安心して暮らすために、小国郷独自の「地域包括ケアシステム」の構築を目指しています。
地域から意識を変えたい
リハビリテーションとは単に機能回復訓練を行うという意味ではなく、障害を持たれた方が生活を再建して、前向きな生活を送れるようになるという意味があることを一般の方に広く理解してもらうことが大切だと思っています。
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例えば、脳卒中で片手が上手に動かせないAさんとBさんがいたとします。Aさんは前向きに明るく生活を送れているけど、その一方でBさんは落胆して心を閉ざしてしまっている。
このような場合に、身体の機能面だけでAさんとBさんを見てしまうと「Aさんも同じ状況なのに前向きに頑張っている。だからBさんも頑張って欲しい」そういった見方になってしまいます。
ここで大切なのは、Bさんにとって片手が動かないということが、どれだけBさんの生活の質を低下させているのかという点に目を向けられているかです。
Bさんは病気を発症する前まで、何を生きがいに生活していたのか?生活のどこに比重を置いていたのか?
背景を知って個人に寄り添うことが大切です。
私たちは、達成したい目的があって行動しています。
そして、人が行動を起こす動機というものは、個人によって全く違います。
食べることが好きな人がいれば、運動が好きな人もいますし、お友達とのおしゃべりが好きな人だってています。
みなさん、それぞれ価値基準は違います。
障害を持たれた方に寄り添う時、あなたはその人のどこを見ますか?
リハビリテーション本来の意味を理解して言葉にする人が増えれば、障害を持たれた方にとって、より優しい世の中になるのではないかと思っています。